赤い糸異国に手操る寶鐸草（93年5月)

もじずりと帰りてひとつ番茶くむ（88年7月）何がいや口もきかぬにもぢづり草（88年7月）煮えたぎる腸(はらわた)冷えぬもじずり草（93年6月）

ふるさとを訪ねんる日の柿日和（92年11月）子を生みて若き女の柿をもぐ（93年11月）湯上がりの髪を結んで柿をむく（94年10月）

茶の花や含み笑いのデスマスク（94年12月）

アキレス腱ちぢみっぱなしの花疲れ (93年3月）姉に会ひ弟に会ひし花野原 (93年8月）

朝顔のフェンスに登る工事中（94年5月)

外人とハッピーニューイヤーと言ひ交わす (93年1月)

蔦もみじ杉のはきたる袴かな （92年10月)

真髄に怒りの走る青ぶどう (93年6月)

柿若葉ぽろっと忘れる事多し (94年5月)

すかし百合苔の暗きを灯しをり (93年8月)

姉の手も同じしみなりわらび取り (92年4月)

無人駅青くて光る風抜ける六月九日三日月駅十四時四十一分発 (97年)

投函し遠回りする冬野道 (89年1月)

さみだれや着崩れしたり露座仏 (93年3月)肩小さき石仏ぬらす春清水 (94年3月)

一輪車あじさい片手にくねり行く (88年7月) 作業服あじさいかなと通り過ぎ (88年7月) 左右見てあじさいの頭子つみていく (88年7月) 額の花おわりは絹のごと変す (88年7月) あじさいのかたくな緑蕾出ず (89年5月) あじさいを折らぬとげんまんランドセル (92年…