2005-01-01から1年間の記事一覧

病巣を絶つ日近づく芽吹きかな

同病の語らい続き桜満つ

無人駅青くて光る風抜ける 六月九日三日月駅十四時四十一分発

梅雨はまだ全山あらわに富士の山

はしり梅雨富士は薄絹かずきをり

単線の軋みに光る風をのせ

いぼ川に光り散らして花菖蒲

イヤリング輝く主婦の忘年会

茶の花や含み笑いのデスマスク

隣家より紅葉の明りをもらひけり

蟷螂の翠のままに枯れにけり

自転車の登りきったり花八つ手

沼畔のいてふの落葉は生かわき

落葉の音無人のボート動き出す

冬のもずアルツハイマーなど知らず 河二月号

生き死にの思案や秋の毛虫落つ

秋の朝黒子消えたる誕生日

猪肉に酔はされたりと故郷(くに)の声

三階に棟上がりけり新酒汲む

ちちろ虫始発電車に驚かず

つげ櫛の髪つまみとる秋灯火

十年日記の頁の軽き十三夜

亡父亡母(ちちはは)の軽きを背負ひ赤とんぼ

亡父(ちち)の痣手の甲にのせ大根蒔く

満月の鬼逆立つ外国に

外国(くに)よりは便り久しき赤とんぼ

満月の鼓動大樹に届きけり

雨傘の赤い花柄敬老日

声立て秋の蛙や腹ふくる 河十二月号

父と子の異な癖もあり秋茜