2005-06-01から1ヶ月間の記事一覧

ゆっくりと使わぬ部屋に除夜の鐘

聖夜かな父の手垢のヨハネ伝

長距離の電話に除夜の鐘も乗る

大鉈を振るが如くに白菜を切る

枯葎陽をためてけふ猫の宿

枯梢パラボラアンテナ冴えて立つ

市役所の大窓を喰ふ秋夕焼

昨日よりひといろ違ふもみじかな

秋霖や虚勢張りたき女郎ぐも

小菊折るその間は止まる万歩計

柿喰へどなほ不機嫌のつのり来る

宵越しの古酒を片づけ朝茶のむ

さらさらのダイエットメニューのとろろかな

重き病置きて睦める神無月

風は秋父の縁の訃報受く

病名を知らず退院神無月

東方に笑ひて喰ふべ青みかん

秋冷えや園児むづかり傘とゆく

湧きいづるごと木犀の咲きはじむ

停年の夫球場に捨て団扇 十月十二日西武球場にて

シューベルト聴いて剥ぎとる栗の皮

栗飯よ退院祝いの睦碗

神無月退院祝いの弦合奏

退院す義兄の酸素に秋の風

秋遊びおしきせを脱ぎ少年となる

先生の肩書はずし秋に翔ぶ

雲遊ぶ台風一過の空深し

大風のあとようやくに秋来たる 二十二号去る

秋の宿ひとつの椅子は空きにけり ホームステイの子、去る

足元に咲くコスモスや音のなし