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老杉や触手のように実のゆるる

袖引くは赤き実のある野の茨

落葉掃く恩師の胸に俳句帳

落葉掃く背なかくしゃくと亡父(ちち)の友

廃屋の屋根重きかな杉実る

金色になりたき杉の実の重き

亡父の家細き畦道雪おこし

ふるさとを訪ねんる日の柿日和

いちぢくは非売品なり露天商

父祖の地に夢追い人と鍋囲む

ちちろ虫間のあるこゑの幽きや

老杉や触手のように実の揺るる

畦道の亡父(ちち)の足跡草紅葉

亡父(ちち)の友なほ矍鑠(かくしゃく)として冬鏡

白菊を隣の墓にも供へたり

老杉の枝々に実の重くあり

円き月オリオンの肩狭めたり

蒼き夜またひとつ落つ枯れた音

枯枝の影くっきりと月天心

月影の小枝にもみじ残りをり

一台の車の通る月天心

月天心終電の音遠くなり

いちまいの枯れた音きくひとりの夜

四ついつつ風なき夜に枯葉落つ

秩父連山白き秀峰かつぎをり

大湯温泉桜紅葉の嚇きかな

栗飯を袋に詰めて旅にあり 秋田