9211
老杉や触手のように実のゆるる
袖引くは赤き実のある野の茨
落葉掃く恩師の胸に俳句帳
落葉掃く背なかくしゃくと亡父(ちち)の友
廃屋の屋根重きかな杉実る
金色になりたき杉の実の重き
亡父の家細き畦道雪おこし
ふるさとを訪ねんる日の柿日和
いちぢくは非売品なり露天商
父祖の地に夢追い人と鍋囲む
ちちろ虫間のあるこゑの幽きや
老杉や触手のように実の揺るる
畦道の亡父(ちち)の足跡草紅葉
亡父(ちち)の友なほ矍鑠(かくしゃく)として冬鏡
白菊を隣の墓にも供へたり
老杉の枝々に実の重くあり
円き月オリオンの肩狭めたり
蒼き夜またひとつ落つ枯れた音
枯枝の影くっきりと月天心
月影の小枝にもみじ残りをり
一台の車の通る月天心
月天心終電の音遠くなり
いちまいの枯れた音きくひとりの夜
四ついつつ風なき夜に枯葉落つ
秩父連山白き秀峰かつぎをり
大湯温泉桜紅葉の嚇きかな
栗飯を袋に詰めて旅にあり 秋田