お日さまの色 もらったの

 雨あがりの朝です。
 庭の花が、とってもきれいな色になりました。
 はっぱはみんないきいきしています。
 お日さまが、はっぱのしずくにあたって、七つの色に光りました。
 小さなかたつむりが、いい気持でさんぽしています。
「赤いバラさんこんにちは。かわいい花を見せてください」
 赤いミニバラは、何も言わずに立っていました。
「いてて!とげにさわっちゃった」


「こんにちは、てっぽうゆりさん。いいにおいをかがせてください」
 白いてっぽうゆりは、ついと横を向いてしまいました。


 お日さまが、かんかんと照りはじめたので、かたつむりはあつくなってきました。
「赤いバラさん、はっぱのかげに入れてください」
「…………」
「あっ、いてて!また、とげにさわっちゃった」


「てっぽうゆりさん、花の中でやすませてください」
「…………」
「あー、ふりおとされちゃった」


「かたつむりさん、こちらへいらっしゃい。そして、はっぱのかげにおはいりなさい。すずしいですよ」
「え?なんだ、はっぱとおんなじ色のあじさいか」
と、かたつむりは、あじさいをばかにしました。


 それから、毎日晴れのお天気で、かたつむりはあつくてさんぽができず、あじさいのかげでくらしました。
 ある日、かたつむりは、風にゆれているあじさいの花を見て、びっくりしました。何十とある花びらが、黄色とピンクにそまって、美しく光っていたからです。


 それから何日かたって、かたつむりは、またびっくりしました。あじさいの花が、すずしい水色に変っていたのです。
 それからまた何日かして、またまたかたつむりは、びっくりしました。こんどは、あじさいの花が、紫色のくす玉のようにきれいに大きくなって、ゆうらゆうらとゆれていたからです。


 ぽつぽつと、かたつむりの大すきな雨が降って来ました。
 せい一ぱい頭とめだまをのばしても、かたつむりは、あのかわいいミニバラと、かおりのよい白ゆりを見つけることができません。もう散ってしまったからです。
あじさいさん、この前はばかにしてごめんなさい。親切なあじさいさんは、お日さまの色を全部もらったのですね。きれいだなあ。とっても」
「ありがとう。かたつむりさん。でもね、とげのあるミニバラさんも、ゆらゆらゆれる白ゆりさんも、わざとさしたり、ふりおとしたりしたのではないのですよ。わかってあげてね」


 あじさいは、雨のしずくを紫の花びらに一ぱいうけています。
「こんどは、どんな色をお日さまにもらうのかな」
と、かたつむりは、あじさいの大きなはっぱの上でつのをふりふり考えました。


(一九八十・六・二六)