8910
宵越しの古酒を片づけ朝茶のむ
さらさらのダイエットメニューのとろろかな
重き病置きて睦める神無月
風は秋父の縁の訃報受く
病名を知らず退院神無月
東方に笑ひて喰ふべ青みかん
秋冷えや園児むづかり傘とゆく
湧きいづるごと木犀の咲きはじむ
停年の夫球場に捨て団扇 十月十二日西武球場にて
シューベルト聴いて剥ぎとる栗の皮
栗飯よ退院祝いの睦碗
神無月退院祝いの弦合奏
退院す義兄の酸素に秋の風
秋遊びおしきせを脱ぎ少年となる
先生の肩書はずし秋に翔ぶ
雲遊ぶ台風一過の空深し
大風のあとようやくに秋来たる 二十二号去る