あき

生き死にの思案や秋の毛虫落つ

秋の朝黒子消えたる誕生日

つげ櫛の髪つまみとる秋灯火

声立て秋の蛙や腹ふくる 河十二月号

父と子の異な癖もあり秋茜

秋暑し短く切れしとかげの尾

秋気配一点に風土踏まず

頭上より主確かむる虫の声

土踏まず秋来る時季(とき)を確かめり

それぞれの呼吸して天地秋めけり

カシオペア肥ゆ秋風の吹きはじむ

来る日々を想ふ幸せ秋ぞ来る

容赦なく羽打ちたる秋懲雨(あきこさめ)

菩提寺に参りし時は秋の雨

秋雨に濡れても一度御入口

秋の雨来るとも知らず武家屋敷

金像の乳房の濡れし秋霧雨

秋の墓式名濡れて現われにけり

姉に会ふ弟に会ひて秋気配

秋霧雨弟墓をなでてをり

秋の陽にメタセコイヤのよみかへり

水蓮の紅白残し秋の池

白猫と秋風の吹く夜の車庫

白猫と秋風ひそむ夜の樹下

受け流す答え見つけし秋の蝉

湯わかしの湯気濃くて秋誕生日

市役所の大窓を喰ふ秋夕焼

秋霖や虚勢張りたき女郎ぐも

風は秋父の縁の訃報受く

秋冷えや園児むづかり傘とゆく