冬のもずアルツハイマーなど知らず 河二月号

満月の鼓動大樹に届きけり

声立て秋の蛙や腹ふくる 河十二月号

洋画館出て地下街でさんま買ふ 河十二月号

それぞれの呼吸して天地秋めけり

白菊のセピアの写真が見てをりぬ

湯上がりの髪を結んで柿をむく

木犀の香りを入れて黒地縫ふ

コスモスのしばらく咲くといふ気配

茶の子届く叔父叔母老ふる広島忌 河十月号

くちなはや肩身の狭く住まいをり 河十月号

口開きタレントとなる夏の鯉 河十月号

子は旅に冷凍にする柏餅 河八月号

気に染まぬこと忘じをりレモン水 河七月号

老い妻の三歩下りて菖蒲見る 河九月号

額の花四面楚歌とか言ふなかれ 河九月号

幼児語の混じる囀り晴れにけり 河六月号

水旨き島に渡りて牡蠣を食ふ クラス会宮島に渡る

一重山吹風止まりなば見繕ふ 河七月号

大名小路梅うすずみに暮れにけり 河六月号

肉食の人とはならず葱坊主

オリオンに届かぬ風の又三郎

夏牡蠣を喰はずじまひの旅果つる

白樺のくろき瘤より霧生まるる

夏霧をかかへし樅の闇深し

さみだれや着崩れしたり露座仏

花栗や戻り確かむ岐れ道

母国語のはづむ緑陰異邦人

隧道の切れ目切れ目の芽吹きかな 河七月号

百蓮の雄しべ雌しべの御開帳