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庭土にひび入り梅雨は明けにけり

花眼もて童話読みける梅雨最中

口開きタレントとなる夏の鯉 河十月号

すっぽんにともだちありし梅雨の池

梅雨の街深呼吸して歩き出す

マンションの灯ともし蛙は寝まりけり

あまたの灯映し蛙は寝まりけり

叔母老ふる長距離電話原爆忌

工夫みな黙してをりぬ夏の蝶

また塗ってまた息かける虫さされ

あわて行く子蛇が蛇行のちひさかり

老い妻の三歩下りて菖蒲見る 河九月号

銀輪に梔の香をのせにけり

額の花四面楚歌とか言ふなかれ 河九月号

青すじあげは菖蒲の芯に紛れたり

むらさきの縮みて菖蒲濃紫

月見草気高き髭の光りけり

おおまつよひ芯の品よき長さかな

九分を食べメロンも食ふる幸せよ

しぼむ前おおまつよひを撮りにけり

沙羅双樹木肌光りて花残す

初穫りや特にみめ佳き茄子ふたつ

泰山木花満つ庁舎午後六時

トマト切る父の香りの流れけり