つゆ

梅雨はまだ全山あらわに富士の山

はしり梅雨富士は薄絹かずきをり

庭土にひび入り梅雨は明けにけり

花眼もて童話読みける梅雨最中

すっぽんにともだちありし梅雨の池

梅雨の街深呼吸して歩き出す

露葎墓を撫でたる弟よ

日時計盤十二支の消ゆ梅雨の雲

梅雨の谷濃きうすきあり詩文字塔

梅雨雲や半身の白し白樺

梅雨の宿文字盤重きパズルかな

キャッスルの棟梅雨空にゆれてゐし

梅雨晴れ間地中海恋ふ魚に合ふ 河九月号

灰皿の山につゆ空くらきかな

つゆ晴れ間黒子の振るごと蝶の舞ふ

煮え切らぬ一日を過ぐ梅雨じめり

まなうらに広目天立つはしりづゆ