9409
つげ櫛の髪つまみとる秋灯火
十年日記の頁の軽き十三夜
亡父亡母(ちちはは)の軽きを背負ひ赤とんぼ
亡父(ちち)の痣手の甲にのせ大根蒔く
満月の鬼逆立つ外国に
外国(くに)よりは便り久しき赤とんぼ
満月の鼓動大樹に届きけり
雨傘の赤い花柄敬老日
声立て秋の蛙や腹ふくる 河十二月号
父と子の異な癖もあり秋茜
秋暑し短く切れしとかげの尾
木犀の香りを入れて黒地縫ふ
犬糞に砂山盛りに萩の咲く
修め得ず逝きし幼な児赤まんま
野佛の鼻埋まってをり曼珠沙華
くじゃく草若き墓石に年令(とし)を問ふ
萩の花闌けたる愛の見えにけり
コスモスのしばらく咲くといふ気配
笑ひけり昨日怒れる葉鶏頭
自意識の過剰なりけり葉鶏頭