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つげ櫛の髪つまみとる秋灯火

十年日記の頁の軽き十三夜

亡父亡母(ちちはは)の軽きを背負ひ赤とんぼ

亡父(ちち)の痣手の甲にのせ大根蒔く

満月の鬼逆立つ外国に

外国(くに)よりは便り久しき赤とんぼ

満月の鼓動大樹に届きけり

雨傘の赤い花柄敬老日

声立て秋の蛙や腹ふくる 河十二月号

父と子の異な癖もあり秋茜

秋暑し短く切れしとかげの尾

木犀の香りを入れて黒地縫ふ

犬糞に砂山盛りに萩の咲く

修め得ず逝きし幼な児赤まんま

野佛の鼻埋まってをり曼珠沙華

くじゃく草若き墓石に年令(とし)を問ふ

萩の花闌けたる愛の見えにけり

コスモスのしばらく咲くといふ気配

笑ひけり昨日怒れる葉鶏頭

自意識の過剰なりけり葉鶏頭