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高階の窓々の灯や広島忌
霧雨や大梓のきつつき忍び声
菩提寺に参りし時は秋の雨
秋雨に濡れても一度御入口
幼な顔残す従兄弟よビール継ぐ
鮎はねる旅にてむかふ誕生日
秋の雨来るとも知らず武家屋敷
姉に会ひ弟に会ひし花野原
露葎墓を撫でたる弟よ
元士族こだわりなんどへ墓洗ふ
夏牡蠣を喰はずじまひの旅果つる
金像の乳房の濡れし秋霧雨
見えるかと一分の望み流れ星 ペルセウス流星群
昼日中大渦巻の野分去る 台風十一号
ひかり号入道雲と走りけり 帰浦和
手花火を空に打ちたり被爆地に
秋の墓式名濡れて現われにけり
姉に会ふ弟に会ひて秋気配
時刻表にはさむ一花は盆供花
盆供花一花つまみて押し花に
ふじばかま少し傾ぎし父祖の墓
秋霧雨弟墓をなでてをり
草加せんべい購うて車窓(まど)より霧雨来る
すかし百合苔の暗きを灯しをり
夏吟行買い物好きの女と在り