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うぐいすに庭げた(サンダル)の音聞こえてか

大けやきすこし緑に霞みけり

週一度便りの来たる春の宿

古なべに長き米炒る春の宵

映画館出て春の陽に動揺す シンドラーのリスト

早春に万葉の花写真展

瀬戸の島それぞれ名あり霞みける

肩小さき石仏ぬらす春清水

うぐいすの声佳き谷に赤き花 岩国にて

鹿の尾の白き寄り合ふ弁財天 あじが浦

法皇の古木横たわる鹿ぬれる

春の雨千畳閣の屋根に降る

大鳥居太らす春の雨赤し

あをさ光る汐寄せて返す時

白浜に汐寄する時あをさ揺れ

千畳敷牡蠣の筏に抱かれたり

かき筏寄せる連絡船航路

水旨き島に渡りて牡蠣を食ふ クラス会宮島に渡る

山霞む次第に近きふるさとよ

ふるさとに川ぞ残りし水ぬるむ

富士川にまだ雪解けの水は来ず

遠近を分けてかすめる西の山

東風に乗る幾多の煙富士覆ふ 広島行

小笠原流の膝してよもぎ摘みにけり

城下町バス通る時椿落つ

筆の花老ひにけり頭の透けて

無視さるることに慣れたるひょうたん草

林道の轍に椿伏せて落つ

大名小路梅うすずみに暮れにけり 河六月号

千本の枝軽くなり姥桜