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ビタミン剤混ぜて炊飯みどりの日

だんご虫ころげて命惜しむなり

亡父(ちち)恋ふる八十八夜の畑ン中

幼児語の混じる囀り晴れにけり 河六月号

清貧にあらぬ女の炉をふさぐ

ほうけても手元確かに春田打つ

東風来たる無数の花びら飛翔せり

四月馬鹿話す相手もなく過ぎぬ

お返しにごまで汚した芹を盛る

地に落ちて八重の桜は樹を仰ぐ

ビー玉のとび出して来るよめな摘み

蕊盛る中にひとつの花残る

手向山赤き芽柔な揃ひ踏み

一重山吹風止まりなば見繕ふ 河七月号

おおぶくの茶を点て花の散るを見る

山吹の花受けし児の泣き止みぬ

花冷えやくろきクレーンの眠りけり

油ぎるクレーンの腕に花の屑