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花冷えや空港に大きな案内板

空と森溶けて桜の散りにけり

溶けそうな青色の土手県境

アキレス腱ちぢみっぱなしの花疲れ

五里渕の旅情はるかしだれ桜

釣り橋の下に道あり花こぶし

宴を解き雨の古城は桜のみ

腹ばいのシャッターチャンスよ花なずな

後戻りしてカメラ構える白たんぽぽ

草笛としだれ桜を握りけり

隧道の切れ目切れ目の芽吹きかな 河七月号

トンネルの切れ目切れ目の青芽かな

機関車を足して峠の山桜

百蓮の雄しべ雌しべの御開帳

夜桜のはんにゃ心教聞こゆなり

口々にもうすぐですねと桜待つ

いま少し首を伸ばすかたんぽぽよ

遺跡掘る穴に吹き寄る桃の花

白きかな木蓮の樹に後光ある

木蓮の白さ広ごる昼下がり

高階に起重機の乗り霞たる

超高階登りつめれば霞退く

おおき花三分の揺れや春の宵

帰国の娘お揃ひで購ふ春帽子

藤村のふと出て春雨冷たし

にごり酒かかえて春の旅は果つ

春の旅終りに購ひしにごり酒

春の夜に指先で読む句碑の文字

春帽子まづ脱いで置く自由席

発車まで二輌電車に春淀む