転生を祈り蛞蝓潰しけり 河七月号

軍手脱ぎ釘抜く女春の風

春の旅終りに購ひしにごり酒

春帽子まづ脱いで置く自由席

蒼き夜やいちまいの落つ枯れた音

冬日没る杉の精気や日本海

日本海もみぢゆっくり流れゆく 花輪線米代川

髪切ればシャンプーの泡余りけり

祭り果つ桶にふどしのからみおり

還暦の足かせはずし杏子もぐ 河九月号

梅雨晴れ間地中海恋ふ魚に合ふ 河九月号

待ちぼうけさても海月の動機あり 河九月号

父の日のとりのから揚げいびつなり 河八月号

主語省く父子の会話みどりの日 河八月号

薔薇の芽も子らも蛙も新しき

子守婆片手に余る蕗のとう

芽いてふのいてふ型なる日暮れ刻 河六月号

冬たんぽぽ咲くや辞典の発売日

バッカスと汗を背負ひて祭り果つ

またひとつ幼な柿落ち夜明けかな

やさしさの仇なることも枇杷熟るる

首折れし薔薇さかしまに吊したり

噴きあがるごと山吹の発光す

寒月のゆく中空の蒼さかな

黝き冷えうぐひす軋む大廊下

寒餅を切り終えし刃を湯に浸す

ティッシュペーパー飛び来る在の鬼やらひ

青い眼の箸に湯豆腐つかまれり

木枯らしをまるめてぬくし紙ふうせん

湯わかしの湯気濃くて秋誕生日